約 1,596,388 件
https://w.atwiki.jp/samarqand1800/pages/43.html
概要 世界線変動前 パクパクデスワの配下のド根性将軍。元々はアザニアの有力部族であるビター族の指導者層の家に生まれ軍人の道を歩んでいたが、部族内で政変が起き親兄弟は勿論、友人もその政変で亡くなって、更に刺客の追跡を振り切るために出奔した。 実家は石油利権に絡んでいたため、色んな国の人と知り合う機会があり、軍人時代には留学経験もあった。 武装難民に毛の生えた軍閥集団にすぎないパクパク共和国では数少ない知識階層の出身であり、アザニア征服後は外交担当者として、ゴールドシップ副大統領に同行し、ミスルとヌビア、そしてその背後にいるロマーニャとの交渉を行う。 世界線変動後 パクパクデスワ政権の外務大臣、諸王国連合を構成する国王の一人でもある。(21-153)。元々は軍人畑で士官学校時代はアルビオン留学にウマーロッパ周遊とアフリカに植民地を持っていた国々との伝手を持っている。 外務大臣としてはパカンダの伝統的な外交方針にのっとり、周辺諸国に対しては頭一つ抜けた軍事力による恫喝と将来的な東アフリカ全体の経済発展を見据えた共同事業の提案による利権の仄めかしを行い(22-68)、旧宗主国のアルビオンとウマムスタンに対しては双方の顔を立てる等距離外交を展開している。(22-62) 主な身分 ・パカンダ諸王国連合外務大臣 ・パクパク共和国軍将軍(世界線変動前) 作中の動向 + ... 世界線変動前 パクパク共和国のアザニア侵攻の際に、初めて登場する。E-50で構成された戦車部隊を率いるも、 第二世代戦車が待ち受ける防衛線に無策で正面から突っ込み壊滅の憂き目にあう。(19スレ) ミスルとヌビア、その背後にいるロマーニャとの、ヘリオポリスでの会談に向かうゴールドシップに同行する。(19スレ) ヘリオポリスでの会談の最中、ゴールドシップ副大統領にパクパクデスワ大統領が軍を戦時体制に移行させ、イクノディクタス内務大臣が国内有力部族の部族長達と長老達を大統領府に呼び出したことを報告する。(20スレ) ついにハッピー族に対する特別軍事作戦が決行されたが、ビター族はグラッセ将軍の手によって既に粛清済みだったため対象から外された。(20スレ)
https://w.atwiki.jp/horibe2210/pages/15.html
列強 各ブロック経済圏の宗主国のこと。 彼らによってこの世界の表が牛耳られている。 トスカーナ合衆国 アルビオン王国 フレネス共和国 ドッチュランド帝国 ルネス主教国 ソニエト共和国連邦 シア皇国 の8カ国であり過去に大日本帝国がこれに加わる。
https://w.atwiki.jp/avion00mondai/pages/18.html
たいち氏は悪名高さで有名なバーチャロンプレイヤーである 2chのバーチャロンスレッドやしたらばのバーチャロン晒しトピックで被害者の証言が見られる。 とにかくマナーが悪いと評判。 イジメについては、絆に手を出していた頃Cさんに擦り寄る(女性プレイヤーだったからだろう)が、Cさんが身内であるM氏を振ったあたりからいきなりCさんを叩き出す。 mixiで粘着して叩き日記を書いたり、関係ない話題の時でも叩いたり、絆から引退しても粘着は続き、取り巻きを駒に使ってまで叩く始末。集団いじめのリーダー格。 名言:擦り寄り中「鬱でも真面目にしとったらええんちゃう」→叩き「鬱は甘え!鬱病の奴に税金使うなんてアホ」。 彼女が居るにもかかわらず友人の方がタイプだとの発言もあった。 「○○の方がタイプやってんけど嫁に告られたから。○○とはいまでも友達」 同じく悪名高いツェペリ氏も側近である。 mixiからはいきなり退会したが、アビオンでの目撃情報あり(今はボーダーブレイクに手を出している模様)。 twitterもやっている(「twitterアカウントのようなもの」の項を参考) フォースだろうがBBだろうが台パン・罵声上等のプレイスタイル。 「俺TUEEEEE!!」の具現者ともいえる。 なぜかフォースのアンチからは「禿田理恵」と呼ばれている。 理由は「柴○理恵に似ている禿たおっさん」だから。 とにかく群れるのが好きだそうだ。 戦場の絆プレイヤー時代に近隣店舗(ニューヒカリ?プラボ?)の女性プレイヤーと浮気。 彼女がいることを隠しての浮気だった為に執拗に相手女性から狙われるといった事態に。 もちろん彼女も知らないがアビオンの身内には「戦歴」として自慢している。←New!!
https://w.atwiki.jp/moekuri2/pages/122.html
能力 生贄召喚[0] [召喚方法] 自分の子をHP0にして死亡にする事で召喚するクリーチャーの召喚時間を死亡させたクリーチャーの2倍減らす。射程4。 入手条件 スケルトン、ワイト、ゴースト、ゾンビを倒す 説明 解禁時の職業は死霊使い。 生贄召喚により召喚時間1以上のクリーチャーを召喚するのに召喚時間1以上のクリーチャーかファミリアが必要になる。クリーチャーやファミリアの召喚時間の2倍と他の召喚方法よりも召喚時間を減らせられる。 グルヴェイグが不死により生贄にされても不死で生き返るので生贄に最適。 職業は初期の死霊使いなら生贄召喚するたびに招霊を発動してSPを増やせる。 敵マスターの近くで軻遇突智を召喚し、不死にして幻術:冥府の宴で疑似2回行動ができる等色々と強力なコンボができる。 幻術師ならSP回復1と囮召喚ができるので死霊使いよりも序盤のSPを溜めやすい。エンプティやエクスチェンジも強力。 職業考察 戦士 ファミリアを召喚できないので耐久戦術しかできない。 移動が低いので接敵が難しい。非推奨。 騎士 ファミリアを召喚できないので耐久戦術しかできない。 移動が低いので接敵が難しい。非推奨。 狩人 囮召喚が使えるのでスムーズに展開ができる。 暗殺者 囮召喚→サヴィトリ→ケルピー→軻遇突智で3ターンキルが可能。 魔術師 インプ召喚で生贄を用意できるが消耗は重め。 治癒師 ファミリアを召喚できないので耐久戦術しかできない。 支援向きなので戦士や騎士ほどは使いづらくは無い。 幻術師 囮召喚やエンプティ、エクスチェンジと召喚ギミックが多いのでパーティの幅が広い。 SP回復1+自恣の旅+技射程アップ1で後衛向きのスペックを発揮できる。 呪術師 ファミリアを召喚できないので耐久戦術しかできない。 精霊使い 精霊召喚を使用する事になるがSPが豊富に使えるので精霊召喚を酷使しなければ問題は無い 雷の印+地形侵食2で移動するだけで雷属性のサポートができる。 エレメントブースト+○の印+○の加護の属性統一パーティ向けの支援も可能。 死霊使い アンデッドを召喚出来、招霊や鎮魂があるので犠牲者が出やすい生贄召喚と相性が良い。 犠牲者もコープスコントロールで使いまわせるのでSPさえあれば強い。 使用感・雑記etc 実際に使ってみての感想、戦略や思い出トークなどあればここに記入して下さい 暗殺者にして1フェイズ目に移動→囮召喚→囮を生贄にサヴィトリ召喚、2フェイズ目に移動→サヴィトリの鼓舞→移動→サヴィトリを生贄にケルピーを隣に召喚→クイックムーブでケルピーと移動のコンボでいきなり敵マスターに隣接出来る -- 名無しさん (2015-09-05 22 58 58) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/newimperatorgiren/pages/343.html
コロンブス コロンブス改 サラミス サラミスK サラミス[後期生産型] サラミス改 マゼラン マゼランK マゼラン[後期生産型] マゼラン改 ペガサス ホワイトベース グレイファントム X アルビオン X バーミンガム U型潜水艦 M型潜水艦 HLV クラップ$ ラー・カイラム$
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8291.html
前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略) 「それはどういういことアルか?」 出撃の直前。燕は自分の耳を疑った。 「お前たちは、もう日本やドイツには帰らないアルか?どうしてアル?」 信じられないという顔の燕。そんな彼女に、あかぎや、武内少将たちは 優しく笑ってみせる。 「……私は、ミッドウェイで沈んだはずだからね」 「ワシと加藤はニューギニアの陸軍に補給物資と少年兵を送り届けた後、 佐々木らを驚かせてやろうとラバウルに向かう途中で、じゃったな」 「そのとおり。まさか佐々木少尉がこっちにいるとは思いもしませんでしたが」 「私はベルリンに侵攻したソ連機甲部隊を攻撃し、敵戦爆連合に突撃したな」 「……オレも沖縄に向かう特攻隊を護衛した後、任務を終えた母機を 逃がすために米艦上機の群れに突っ込んだ」 「私は、『震電』の完成が間に合わなかったために散っていった搭乗員たちに 詫びたはずでした。 気がつけば回していない発動機が全開で砂漠を飛んでましたけどね」 冗談でも言うように皆笑っていた。まだ信じられない燕の頬を、彼女と 視線を合わせるようにかがみ込んだあかぎが優しく包み込む。 「私たちは、自分の意思で決めたの。でも、燕ちゃん、あなたは帰らなきゃダメよ」 燕は裴綻英と霍可可に目を向ける。二人も、笑っていた―― その日。空は澄み渡るように晴れ上がっていた。 クロステルマン伯爵領とガリア王国の間に横たわる国境線。 それはラグドリアン湖に続く一本の川だ。川を挟んで広大な草原と麦畑が 広がり、その向こうに緩やかな稜線が見える。平時であれば麦畑で作業する 農民たちと、時折鳶の声がするくらいの静かな場所は、今、かつてない 緊張に包まれていた。 「……陛下。トリステイン全艦隊の配置が完了致しました」 トリステイン王国空軍艦隊司令長官であるハイデンベルグ侯爵が告げる。 ここはトリステイン王国艦隊の旗艦『ラ・レアル』の指揮所。 トリステイン艦隊は武雄たちからの情報を検討し、主砲の射程が長い 戦列艦以外のすべての艦を下がらせた。近づく前に撃沈されるのでは 意味がないからである。だが、今回の作戦に参加する『ラ・レアル』以下 十隻の戦列艦も、有効射程四千までどれだけの艦が生き残れるかは 神のみぞ知る、だった。 「アルビオン艦隊はどうか」 「はっ。旗艦である巡洋艦『イーストウッド』を先頭に、単縦陣で我が 艦隊に追従しております。 ですが、陛下。たった三隻の巡洋艦では……ジェームズ一世陛下も、 何故戦列艦を我が国に送って下さらなかったのでしょうか?」 ハイデンベルグ侯爵は指揮所のある船尾楼甲板からずっと後方に位置する 異質な巡洋艦に目を向ける。王は、ただ「知らぬ」と答えることしか できなかった。 それは、傍目にも奇妙なフネだった。 巡洋艦らしくスマートな船体に長期航行にも耐える大型のマスト、 そこまではいい。だが艦首部が大きく取られており、そこには帆布を かけられた巨大な『何か』があるだけ。両舷に並ぶ備砲も艦後半部に 集中しており、しかもその数は平均的な巡洋艦と比較して半分以下。 そんな同じ艦形が三隻も。それぞれ竜騎士一個小隊が搭載可能という ことを差し引いても、マストが後方に下げられ上甲板の半分がフラットに された上にそこに件の『何か』があるだけというのは、用兵の常識から かけ離れたものだった。 「竜騎士を効率的に運用するため、にしても奇妙なフネですな」 「アルビオンはここ二十年以上冶金技術の向上など、貴族と平民が官民 一体となった研究を続けていると聞いておるからな。 あれもそのたぐいであろう」 「我が国を実験場に使うとは、あまり良い気分ではありませぬな」 「逆の立場であれば、余は同じことをしただろうがな」 王の言葉に、ハイデンベルグ侯爵は二の句が継げなかった。 艦隊が展開する上空に、マンティコア隊隊長であるカリンはいた。 傍らには副長のド・ゼッサールがいる。鍛え上げた体躯に威厳を持たせるための 髭面と近寄りがたい雰囲気だが、彼も家督を継いだばかりのまだようやく 大人の仲間入りをしたくらいの年頃だ。『烈風』カリンを頂点とする マンティコア隊を支える頭脳として、ド・ゼッサールはカリンとともに 空にあった。 「……来ませんな」 ド・ゼッサールのつぶやきを、カリンは聞き逃さなかった。 「物見の兵からの報告では、もうまもなく稜線から見える頃だな。 敵を確認次第お前たちは毒消しを飲め」 「隊長は?」 「あんなまずいもの飲んで戦えるか。まぁ、敵の射程を教えてくれたことには 感謝するがな」 魔法衛士隊統合参謀長のサンドリオンがこの場にいれば叱責された であろうその言葉を、ド・ゼッサールは飲み込んだ。王の後詰めとして 王宮にいる人間では、最前線まで声は届かない。そしてそれは伝説の 隊長であれば『毒』を喰らうこともないという、過信が呼び起こした ものでもあった。だが、一抹の不安がド・ゼッサールの顔に陰りを差す。 「……そんな顔をするな。ぼくの分は、もらえなかった誰かにやってくれ。 お守りにはなるだろう」 そう言って、カリンは油紙の包みをド・ゼッサールに渡した。 それは彼から割り当ての都合でもらえなかった新婚の魔法衛士に手渡される。 数の少ない秘薬を上位の将校から割り振ったため、魔法衛士隊でも下級の者には 配給されなかったのだ。もちろん、竜騎士隊や大多数の兵は言うに及ばず、 である。 そこに、前方から旗艦『ラ・レアル』に竜騎士が滑り込む。 その意味は明らかだった。 「来たか。全騎攻撃準備!パーティを始めるぞ!艦隊とともに前進し、 主砲斉射後に突撃する!」 カリンの号は、マンティコア隊だけでなくド・ワルド子爵率いる グリフォン隊にも響き渡った。同時に、彼らの上空に待機していた 第二、第三竜騎士大隊にも。第二竜騎士大隊を指揮するギンヌメール伯爵は、 麾下の竜騎士たちに命令する。 「我々は先行して上空待機。艦砲射撃に続いて上空から一気にかぶりつく! 距離一万からは敵の領域だ。炎や光が見えたらすぐ回避行動に移れ!」 「「了解!」」 大隊長の命令に士気旺盛な竜騎士たちの声が轟く。この戦いはただでは 済まない――皆そう考えていた。 「……敵影確認!まっすぐこちらに向かってきます!」 斥候の竜騎士からの報告からすぐのこと。太陽が高く昇る中、稜線の 向こうから巨大な影が現れた。馬よりも速い移動速度で、どんどんこちらに 近づいてくる。国境線である川に達するのも時間の問題だった。 「敵が国境を越えるまで手を出すな!両舷最大戦速!風石にありったけの 魔力を込めろ!後続の艦にも発光信号で伝達。急げ!」 「なんと……まがまがしい姿よ」 指示を飛ばすハイデンベルグ侯爵の後ろで、フィリップ三世は指揮所に 据え付けられた簡易の玉座から立ち上がる。『遠見』の魔法を映し出した その両目は、迫り来る『キョウリュウ』を捉えて離さなかった。 「俺も出る!ルーリー、ペラ回してくれ!」 「分かった。……重いんだよ……これは」 敵影見ゆの報に接し、武雄も発進準備をする。 本来なら始動機の転把(この場合はフライホイールに接続されている クランクハンドルのこと)を回して発動機を始動するが、ここではその機材が ない。そもそもタルブの村での機材そのものが、あかぎの頭の中にあった 設計図から部品をそれぞれ別々の鍛冶屋に頼んで作成したものを組み立てて 使っているのだ。なので、今はルーリーが『念力』の魔法で強制的に プロペラを動かして始動させることになる。 時間をかけてどんどん回してプロペラが十分空転したところで、武雄が 「点火!」の声と同時に計器板の点火スイッチを入れる。栄一二型発動機が うなりを上げてプロペラが力強く回り始め、ルーリーが髪を抑えつつ 機体から離れた。 「行ってくる!」 「アタシも最後の締めに参加する!気をつけてな!」 複座零戦がするりと動き始め、なだらかな草原を滑走し始める。尾輪を 浮き上がらせ、そのまま空に舞い上がる複座零戦。片脚ずつ主脚を格納するのを 見届けた後、ルーリーも待機していた竜騎士とともに前線の『ラ・レアル』に 合流するため飛び立った。 「敵、国境を越えます!距離八千!」 「アルビオン艦隊、戦列を離れます!」 「何だと?単縦陣のまま、敵前を横切るつもりか?だがこの距離では!」 その報告にフィリップ三世が驚きの声を上げる。その顔がさらに驚愕に変わる。 「な、何だあれは!?」 巡洋艦『イーストウッド』を旗艦とする三隻のアルビオン艦隊の艦首に あった帆布が取り払われ、隠されていたものがあらわになる。 それは――見たこともない長砲身の大砲だった。 「これより我が艦隊は丁字戦法にて敵『キョウリュウ』を撃滅する。 主砲覆いを外せ!目標、『キョウリュウ』!主砲発射後に竜騎士隊全騎発艦!」 アルビオン派遣艦隊司令官を兼任する『イーストウッド』艦長 サー・アレクシオスが命令する。 命令によって外される、主砲を覆い隠していた帆布。そこに現れたのは、 近代的なバーベットと、それに守られた三五口径二四サント単装砲。 二十年かけて工作機械の技術水準を引き上げ、さらに五年の歳月を費やして 製造された、オリジナルに劣るところこそあれ、多くの犠牲を払いながらも ハルケギニアの人間の手だけでようやく生み出した『畝傍』の主砲の コピーだった。 アルビオン王国にとって、エンタープライズ家より献上された 『場違いな工芸品』――巡洋艦『畝傍』は、まさに宝の山だった。 機関、砲熕兵器、装甲、どれをとっても今のハルケギニアの技術水準を 大きく上回り、これらをものにできればアルビオンの技術水準は大いに 向上し、ハルケギニアにおける軍事的地位も頂点に達することは確実だった。 だが、それらの複製には多くの困難が待ち受けていた。機関や砲熕兵器は 特殊鋼を鋳造したものを削り出した部品を多用しており、その製造は ゲルマニアの最新鋭の足踏み式旋盤などの工作機械でも到底不可能だった。 特に水力などを利用する大型旋盤の発展は不可欠で、このためにアルビオンでは 貴族、平民を問わず官民一体で地道な発展作業を続けることになった。 しかも、ロマリアに異端審問されないように内密に。 それは、旋盤で加工したより硬度の高い金属で新たな旋盤を作成し、 さらに硬度の高い金属を加工して……を繰り返す、地道な作業だ。 これの達成には二十年の歳月がかかり、平行して蒸気機関、砲熕兵器の 研究も進められた。特に主砲の材質については、持ち帰った主砲を試射した際に 新設した架台の強度不足と不適切な装薬の取り扱いで腔発事故を起こし、 破損した砲身を研究したことが大きかった。彼らの犠牲と献身により、 アルビオンは秘密裏にその技術水準において他国を圧倒することになる。 また最大の問題であった特殊鋼は、ハルケギニアでは未だ利用されていない 未知の金属であるニッケルに代わり、ゲルマニアで産出され、主に陶芸や ワニスの防腐剤に使われるボロンを添加することで比較的近い強度のものが 精錬できることが分かり、砲身の製造にはこれが用いられることになった。 それはメイジの魔法だけでは達成できない、平民の知識と経験、卓越した 職人技を併用した国家規模の努力の結晶だった。 『イーストウッド』級巡洋艦は、この主砲を運用する専用艦として 建造された。主砲が二四サントに決定されたのも、残された『畝傍』の 砲弾と装薬を使用できるようにするためだ。 本来は『畝傍』のようにフネを装甲で覆い、複数の主砲を搭載するべき なのだが、風石を使用するハルケギニアの帆走式軍艦では、積載重量が 過大となり、まともに飛べない有様となった。開発中の蒸気機関がものに なればその問題も解決されるのであろうが、それにはまだ時間を必要とした。 そのため、主砲を一門だけ搭載した艦を複数同時運用し、快速を生かして アウトレンジで敵を撃滅する方針がとられた。つまり、複数の軍艦を 一隻の大型艦として運用する方法をアルビオン空軍は選択したのである。 竜騎士の搭載は副次的なものだ。要するに、重量過大で積めなくなった ものを降ろして空いた部屋にとりあえず積み込んだ、ということだったが、 これは本級の意図を隠す絶好のカムフラージュとなったのだった―― 「主砲旋回急げ!トリステイン艦隊に発光信号!『我コノ一撃ヲモッテ勝利ヘノ号砲トナス』だ!」 サー・アレクシオスが命令する。『イーストウッド』級の主砲の旋回は 人力だ。時間はかかるが、現在ではそれに代わるものがない。実戦での 旋回は初めてのため、これが以後の研究課題となるだろうと彼は考えていた。 『イーストウッド』と僚艦『レーガン』、『ブッシュ』は、見事な 艦隊運動で『キョウリュウ』をその射程に捉える。 「撃てぃ!」 サー・アレクシオスの号令で、『イーストウッド』『レーガン』 『ブッシュ』が主砲を発射する。わずかな遅れはそれぞれの弾道を安定 させることになるが、彼らはそれを訓練で熟知していた。主砲が爆発 したかのような猛烈な火炎とトリステインの人間が今まで聞いたこともない 衝撃波を伴った轟雷のような音が轟き、音速を超えた砲弾が八千メイルの 距離を飛び越えて着弾した。大きく舞い上がる土埃。その光景にトリステイン艦隊は 言葉を失い……そして歓喜した。 「な、なんという……」 「ジェームズめ……こんなものを開発しておったのか」 トリステインの首脳部は、アルビオンが『たった三隻の巡洋艦』を 派遣してきたのではないことを知った。彼らは、この未曾有の事態に 『最新鋭の巨砲三門』を送ってきたのだと。 それと同時に、彼らはアルビオンが敵でないことを始祖に感謝した。 「全軍突撃!我らも早く攻撃に転じよ!」 フィリップ三世が檄を飛ばす。その声に呼応するように、旗艦 『ラ・レアル』以下、トリステイン艦隊が最大戦速で距離を詰める。 やがて……土埃が晴れた。 「バカな。直撃があったはずだ……くそっ。手を休めるな!次弾装填! 次は虎の子の徹甲弾をくれてやれ!」 『遠見』の魔法を使って状況を確認したサー・アレクシオスは手を休めない。 発光信号で命令が『レーガン』以下に伝達される。だが、そのとき、 彼の背筋に悪寒が走った。 「いかん!下げ舵六〇!総員、何かにつかまれ!」 サー・アレクシオスは『イーストウッド』を急速降下させる。 追随する『レーガン』。だが、最後尾の『ブッシュ』は遅れた。 それまで『イーストウッド』がいた場所を、赤い輝きが貫く。それは なぎ払うように横に滑った。そして……『イーストウッド』を轟音と 衝撃波が襲う。 「な……アーガス……」 サー・アレクシオスは、兵学校の同期であり、『ブッシュ』艦長だった 親友の名を呼ぶ。『ブッシュ』がいた場所は――燃え盛る炎が落ちていく だけになっていた。『キョウリュウ』の攻撃であることは、明白だった。 「『レーガン』、前に出ます!」 「何だと!?デビアス、俺の盾になるつもりか?!」 サー・アレクシオスが歯がみする。『レーガン』も、さっきの攻撃を 完全に回避できたわけではなかった。マストが折れ、速力が落ちていることは 傍目にも分かった。やがて、『我先行ス。狙イ撃テ』の発光信号が 『イーストウッド』に届けられた。 「マービィ!生きてるか!」 「カニンガムか……エメラルド小隊は俺たち残して全滅だ。発艦中に 母艦がやられた」 『イーストウッド』から発艦したガーネット小隊の隊長、カニンガム大尉が、 『ブッシュ』に搭載されていたエメラルド小隊の隊長、マービィ大尉たちと 合流する。 「ジャーバス、無事だったか。ミネルバ中尉も」 「グレッグか。何とかな」 「ああ、あたしらが発艦した直後、フネを赤い光がなぎ払ったんだよ。 それで終わりさ」 グレッグの言葉に、ジャーバス少尉とミネルバ中尉が憔悴した声で 応えた。 「けど、このままじゃ終われないねぇ……」 ミネルバ中尉が憎々しげに『キョウリュウ』をにらみつける。 アルビオン竜騎士隊でも珍しい女竜騎士は、今怒りに震えていた。 「お前の言うとおり、このままじゃ終われないさ。 カニンガム。俺たちはこのまま突撃する。ヤツに杖を突き立てないと 気が済まん」 「分かった。援護する。だが、足は俺たちの方が速いぞ。遅れるなよ」 カニンガムが言う。カニンガム大尉率いるガーネット小隊は風竜を、 マービィ大尉率いるエメラルド小隊と、『レーガン』に搭載されている トパーズ小隊は火竜を騎竜としている。その速力差をカニンガム大尉は 心配するが、マービィ大尉はふっと笑った。 「誰に向かって言っている。ミネルバ、ジャーバス、借りは倍にして返すぞ!」 「「アイ・サー!」」 「このままでは……ぼくの『カッター・トルネード』で先制する! 攻撃後、全騎突撃!」 カリンが呪文を唱え始める。それを援護する陣形を組むマンティコア隊。 そのさらに上空から、太陽の中から飛び出すように黒い影――複座零戦が 逆落としに飛び出した。 武雄は九八式射爆照準器からはみ出すくらいまでに、これまでの攻撃で いびつに擬装用皮膚がはげ落ちた『キョウリュウ』に近づき、20ミリ機関砲を 発射する。逆落としの対地攻撃のため、一航過で緩降下に移行して再上昇するが、 そのとき、通信機に怒りと困惑の声が響いた。 『海軍!我々は味方だ!』 「……………………。あいにくだが、俺たちはあんたらを沈めなきゃならねえ」 武雄が憎々しげに応える。今の一撃は頭部天井の乗降ハッチを狙った。 うまくいけば、もう彼らの姿を表に出すことはない。 『ふざけるな!海軍!何のつもりだ!』 「あんたらがあかぎの呼びかけに応えてりゃ、こんなことにはならずに 済んだかもしれないんだよ!」 『な……貴様ぁ何の』 武雄は通信を強制的に打ち切る。その代償は、複座零戦の真後ろを 通りすぎた光。さっきのもそうだが、どうやらあかぎの悪い予感が 当たったらしい。三十年ぶりの実戦に震える機体をなだめつつ、武雄は あかぎに回線を繋いだ。 「あかぎ、聞こえるか?ヤツの武器は原子力光線砲だ。真っ赤な光が 口から照射されている」 『原子力光線砲だったら、目には見えないわ。それはたぶん照準用の 探照灯ね。光とわずかにずれた場所が攻撃されているから、気をつけてね。 私たちももうすぐ到着するから。無茶はしないで』 「了解!……さて、役者が揃うまでお膳立てするか」 武雄は不敵に笑う。空は徐々に暗くなり始めている。 日食が始まったことを示していた。 「……な……あれは、いったい何ですか?空に軍楽隊でも連れてきて いるんですか?それに、あの攻撃は」 「おちつけ、ド・ゼッサール。あれはタルブの『竜の羽衣』だ。 あんなに機敏に動けたんだな……。しかも、今の攻撃は……」 見たこともない光景に慌てるド・ゼッサールを、カリンが制する。 だが、カリンも『竜の羽衣』こと複座零戦の、今まで見せたことのない 機動に言いようのない気持ちがわいてきていた。 「ぼくたちも負けるわけにはいかない!ぼくが先制する!まもなく艦隊の 砲撃があるからそっちにも気をつけろ!」 「隊長!敵がこっちに!」 「躱せ!」 カリンの命令で急遽全騎散開する。その直前まで彼らがいた場所を、 赤い光が貫いた。 赤い光が突撃するアルビオン竜騎士隊をなぎ払う。後ろを振り返る いとまもなく、グレッグは戦友の骨を拾うことすらできない戦場に 歯がみした。 「コンロッド、生きてるか」 「ああ。なんとかな。今のでグレゴリーとギブスンがやられた。 このままじゃ、エメラルド小隊の援護どころか俺たちが全滅するぞ」 コンロッドがそう言ったとたん、頭上を軍勢が通り過ぎたような轟音が 通過する。『イーストウッド』と『レーガン』が主砲を発射したのだ。 残念ながら命中せず、『キョウリュウ』の後ろに土埃の柱を高く舞い上げた だけに終わった。反撃の赤い光を『イーストウッド』は回避するが、 『レーガン』が回避しきれずに徐々に船足を落としていた。 「くそっ。まとめて焼かれたトパーズ小隊よりマシって言うのかよ? 『竜の羽衣』もすごいのは分かったが、あんまり攻撃が効いてるようには 見えないぞ」 「無駄口を叩くな!まもなくトリステイン艦隊も砲撃を開始する。 死んでいった仲間の無念は、俺たちで晴らすんだ!」 カニンガム大尉の叱咤が落ちる士気を食い止める。今の彼らにできることは、 一刻も早く『キョウリュウ』を沈めることだけだった。 「一カ所に固まるな。まとめてなぎ払われるぞ! 小隊単位で飽和攻撃を仕掛ける。第一小隊、私に続け!」 ギンヌメール伯爵が、直属の小隊を引き連れて攻撃を開始する。 その眼前で『キョウリュウ』を竜巻が包み込んだ。マンティコア隊隊長の 『烈風』カリンが、風のスクウェアスペル『カッター・トルネード』を 放ったのだ。真空の層を挟み込んだ荒れ狂う竜巻が『キョウリュウ』を 翻弄する。だが、その重量からか、表面の擬装用皮膚をはがしただけで 倒すには至らなかった。 「烈風どのの魔法でもダメか……。だが、なんとまがまがしい姿よ。 鉄の竜とはよく言ったものだ」 『キョウリュウ』の擬装用皮膚は今の魔法でずいぶんとはがされ、 その下にあった均質圧延装甲の無塗装の地肌が大きく露出している。 その頭部には、武雄の攻撃でうがたれ、破壊された跡が目立つ。武雄が 頭部に集中して攻撃していることを、ギンヌメール伯爵は奇妙に思った。 伯爵は、武雄が『キョウリュウ』の頭部に装備された無線アンテナや 聴音機、潜望鏡などの『目』や『耳』となるもの、そして搭乗ハッチのような 『中に人が乗っていることを知らせる』ものを破壊していることは知らなかった。 もし、伯爵が無線を傍受することができたなら、『キョウリュウ』に 搭乗している帝国陸軍戦車兵たちの怨嗟の声を聞くことができただろう。 だが、それは叶わぬことだった。 「陛下!全艦、敵を射程圏内に捉えました!」 「……我が方の損害は?」 「現在二隻。ですが、総員士気旺盛。いささかの問題もありませぬぞ!」 ハイデンベルグ侯爵が胸を張って王の問いに答える。彼らが乗る 『ラ・レアル』とて、無傷ではない。フィリップ三世は簡易の玉座から 立ち上がると、『キョウリュウ』をにらみつけ、杖を向ける。 「全艦攻撃態勢!敵を撃滅せよ!」 王の号令の元、残存全艦の左舷放列が火を噴いた。 「ふぅ。今の竜巻……あの隊長さんのか」 武雄は乱れた気流から脱し、一息つく。上昇中に見た、マンティコア隊が 隊長を守る布陣を取っていたことから、今の竜巻はカリンが放ったものだと 推測する。ようやく射程に捉えたトリステイン艦隊も砲撃を開始するが、 効果はないように見えた。逆に『キョウリュウ』の反撃で、爆散する 戦列艦すらある。一方で突撃した魔法衛士隊や竜騎士大隊も友軍の砲撃を 見て避けているわけで、通信技術が確立していない戦場の混乱は武雄には 手に取るように分かった。 「骨董品の大砲じゃ通じるわけないが、だからと言ってお前ら撃つな、 なんて言えるわけないしなぁ……」 武雄は再び高度を取る。あかぎから、被曝しないためには放射能が 存在する場所に長居しないこと、汚染されたものを口にしないこと、 そしてなにより汚染された空気を吸い込まないことだと聞いている。 甲状腺保護にヨウ素錠剤は服用したものの、自分たちはあまり長生き できないな、と考え、ふっと笑った。 「……何考えているんだか。俺もヤキが回ったか?」 そのとき、武雄の視界の端にきらりと光るものを見つける。 それが何であるか、武雄にはすぐに分かった。 あかぎは、落下傘降下高度で飛行する連山から落下傘降下して本陣近くの 湖に降り立った。あかぎを降ろした連山はそのまま『キョウリュウ』 目指して飛び去っていく。着水したあかぎは落下傘を投棄し、湖の周辺に 誰もいないことを確認すると、武雄たちいわゆる『竜の羽衣』の乗り手 ――タルブ義勇軍の航空管制を開始する。 あかぎは暗くなった空を見た。日食は進み、もうそれほど時間は残されて いないことは明白だった。 「燕ちゃんたち、遅れないでね」 あかぎには祈ることしかできなかった。 前ページ次ページ萌え萌えゼロ大戦(略)
https://w.atwiki.jp/mainichi-matome/pages/7301.html
3月19日名古屋版夕刊 2012年3月19日 毎日新聞 東京夕刊<縮刷版> 関連ページ 3月19日名古屋版夕刊 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事193 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/ms/1330873879/164 1面題字下:西濃運輸 記事:★市民にクラスター リビア調査国連が認定★ 途中:毎日アースデイ新聞(カラー) 下:(株)ウェブクルー(3段) 2面下:(株)大共薬品(3段) 3面下:JARO AC(6段) 4面下:Newsがわかる 毎日文化センター(6段) 6面下:佐川急便(囲碁) 毎日通販(7段) 7面下:日本新聞博物館 GAORA ウェスティンナゴヤキャッスル(5段) 8面途中:ミッドランドスクエア 2012年3月19日 毎日新聞 東京夕刊<縮刷版> 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事199 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/ms/1348997722/105 1面:★メルセデスベンツ★、毎日アースデイ新聞、アルビオン 6分の1 2面:毎日新聞旅行 3分の1 3面:日本直販 3分の1 5面:(西武グループ、スカパー!ドラマTV)広告・企画制作毎日新聞社広告局、森下仁丹株式会社 6分の1 6面:WORLD www.world.co.jp/ie/ 全面 7面:(AZUMAN www.azuman.co.jp、伊勢丹、パトリック・コックス)広告・企画制作毎日新聞社広告局 3分の1 10面:GAORA、サンマリエ、興和株式会社 興和新薬株式会社 3分の1 11面:毎日.jp、熊本大嶌屋優美堂 6分の1、(株)木谷製茶場 6分の1 12面:ローヤル株式会社、赤穂の天塩、アルビオン www.albion.co.jp 3分の2 関連ページ 2012年1月- 6月 毎日新聞に広告を出していた企業
https://w.atwiki.jp/mainichi-matome/pages/7312.html
3月24日名古屋版夕刊 2012年3月24日 毎日新聞 東京夕刊<縮刷版> 関連ページ 3月24日名古屋版夕刊 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事193 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/ms/1330873879/206 1面題字下:岐阜プラスチック工業 途中:毎日アースデイ新聞(カラー) 下:SHサンヘルス(3段) 2面下:毎日文化センター(5段) 3面下:(株)加美乃素本舗(2段) 4面下:(株)大共薬品(5段) 6面下:阿含・桐山杯(囲碁) ★KIKKOMAN★(7段) 7面下:毎日中部本社 日本音楽コンクール受賞記念演奏会(主催:毎日新聞社、名古屋音楽学校、セントラル愛知交響楽団 協賛:ヤマハミュージック東海)(5段) 途中:★両口屋是清★ 8面途中:ミッドランドスクエア 2012年3月24日 毎日新聞 東京夕刊<縮刷版> 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事199 http //ikura.2ch.net/test/read.cgi/ms/1348997722/264 1面:★メルセデスベンツ★、毎日アースデイ新聞、★アルビオン 6分の1★ 5面:ヤーマン株式会社 全面 6面:双日インフィニティ株式会社 全面 7面:★LACOSTE ラコステ 2分の1★ 8面:興和株式会社 興和新薬株式会社 6分の1 9面:毎日通販 3分の1 10面:★小林製薬 3分の1★ シンポジウムなくそう減らそう歯の病気~考えようハミガキの大切さ~ 11面:毎日新聞社、(住宅金融支援機構 フラット35、がくぶん、フード・アクション・ニッポン、ロイヤルパークホテル 企画制作・毎日新聞社広告局)3分の1 12面:赤穂の天塩、ローヤル株式会社、★アルビオン www.albion.co.jp 3分の2★ 関連ページ 2012年1月- 6月 毎日新聞に広告を出していた企業
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7557.html
前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第73話 反撃開始! 二人のウルトラマン 円盤生物 ノーバ 高次元捕食体 ボガール ウルトラマンジャスティス 登場! ヤプールの悪辣な罠にかかって、円盤生物ノーバと高次元捕食体ボガールの 挟み撃ちによって、絶体絶命の危機に陥ったウルトラマンA。 しかし、もはやこれまでかと思われたそのとき、ノーバの作り出した赤い雨の 黒雲を打ち破り、一閃の光がボガールを撃ってエースを救った。 そして、黒雲を消し去った光芒の中から姿を現した赤い巨人。それは、かつて 超獣サボテンダー、さらにレッサーボガールを倒した、この世界の宇宙を守る戦士。 「グ……キサマハ……」 ボガールは、以前自分の手下を全滅させ、自らにも手傷を負わせた仇敵の姿を 見て憎憎しげにつぶやいた。しかし、邪悪な者たちにとっては憎らしいものにしか 感じられないだろうが、心ある人間たちにとっては光と希望の象徴と見えた。 「あれはまさか、ティファニアの言っていた」 「もう一人の、ウルトラマン!」 輝きを取り戻した太陽の下を飛ぶシルフィードの上で、キュルケやロングビルの 驚愕と歓喜のまざった歓声が、空へと吸い込まれていく。 今こそ、全世界の命運をかけた戦いは新たなラウンドを迎えたのだ! 「デュワッ!」 エースの危機を救ったウルトラマンジャスティスは、右腕を前に突き出す ファイティングポーズをとって、思いもよらない敵の出現に動揺するノーバと ボガールを威圧する。 「ハァッ!」 構えを解き、ジャスティスは二匹の怪獣をめがけて走り出す。当然、二匹は 向かってくる敵を迎え撃とうとしたが、ジャスティスが地を蹴ったと二匹がその目で 認識した瞬間には、ジャスティスは一瞬にしてマッハ3.5の最高地上走行速度にまで 加速し、その姿はすでにボガールの正面にまで達していた。 「速い!」 距離にしたら1000メイルはあろうかという距離を、常人ならば瞬間移動した かのようにさえ思ったであろう速度で駆け抜けたジャスティスの俊足には、 『雪風』の異名をとるタバサでさえ驚嘆するしかなかったが、ジャスティスの 攻撃はさらに突風のように二匹に襲い掛かる。 「デヤァッ!」 ジャスティスのハイキックがボガールの顔面を打ち、無防備だった鼻っ柱に 強烈な一撃を食らったボガールはたまらずに、よろめきながらあおむけに 転ばされ、ついでノーバには左ストレートを打ち込んでひるませた後、 その頭をドッジボールの玉のように掴んで、ボガールに向かって投げつけた。 「ダァァッ!」 起き上がろうとしていたボガールにノーバが頭から突っ込んで、両者は 鞭やマントを絡ませてもんどりうった。 「すごい……」 新たなウルトラマンの力も、エースに勝るとも劣らないすさまじさに、 誰もが呆然として見とれた。 けれど、ジャスティスは絡み合ってなかなか起き上がれないでいる ボガールとノーバに追撃をかけようとはせずに、力を使い果たし、 ひざを突いてカラータイマーの点滅を消えかけさせているエースに 歩み寄ると、自らもエースのかたわらに片ひざをついて、無言で エースの右手をとると、エネルギーを光の粒子に変えてエースへと 送り込んでいった。 『ジャスティスアビリティ』 (これは……エネルギーが、回復している) 巨大化状態すら維持できなくなりかけていたエースのカラータイマーが 青に戻り、同化の影響で疲労感が溜まっていた才人とルイズも楽になってくる。 「あなたは?」 力を取り戻したエースは、無言で見守っているジャスティスに問いかけたが、 ジャスティスは立ち上がると、構えを取り直して冷静にエースに告げた。 「話は後だ」 「……!」 見ると、転ばされてもつれ合っていたボガールとノーバがようやく起き上がって、 再びこちらへと叫び声をあげてきている。二匹とも、まだまだ余力があると見え、 むしろ表情を持たないノーバさえ怒りに燃えているという風に鞭と鎌を高々と掲げて、 口からは凶暴化ガスを漏らしている。 だが、邪悪に対する怒りならばウルトラマンは負けない。 「デヤァッ!」 「デュワァッ!」 並んで同時に構えをとったエースとジャスティスは、真正面から二大怪獣を迎え撃つ。 「よっしゃあ、これで二対二よ。いっけぇー!」 キュルケの叫びがゴングとなったかのように、戦いの最終ラウンドの幕は切って落とされた! 「トォーッ!」 「ドァァッ!」 エースが空中に飛んでノーバを蹴りつけ、ジャスティスは捕食器官を全開にして 飛び掛ってくるボガールを受け止めると、圧倒的なパワーで地面に叩き付ける! 対して、まさかこの場にレッサーボガール戦以降、ずっと未確認の存在であった ウルトラマンジャスティスが乱入してくるとは計算していなかったヤプールは。 「うぬぬ……なにをしている! 二人まとめて早くやっつけてしまえぇー!」 と、焦って叫ぶが、それこそこれ以上策がないことをエースたちに露呈して しまうだけの結果となった。確かに、エース一人だけを対象にしたならば、 二十万人の人間を人質同然にしてエースに連戦を強いて消耗させて倒す ヤプールの作戦は完璧といえたが、他のウルトラマンの救援という事態までは それに盛り込まれておらず。ナックル星人やババルウ星人、ギロン人や リフレクト星人なども勝利寸前で大逆転を許している。唯一それを計算に入れて 勝利できたのはヒッポリト星人くらいだ。 二人のウルトラマンの攻撃を受けて、ダメージを受けた二匹はなおも 持ち前の凶暴性を発揮して逆襲に転じようとするが、それも無駄だった。 ボガールはエースに向かって波動弾を放つが、エースは体の前で腕を 回転させて作り上げたバリアで身を守る。 『サークルバリア』 全弾を跳ね返されて、腕を震わせて悔しがるボガールの隣から、ノーバは もう一度円盤形態になって、高速回転しながらジャスティスに体当たりを かまそうと突進するが。 「ヌゥンッ!!」 なんとジャスティスは突撃してきたノーバのマントのすそを真正面から がっちりと受け止めると、そのまま9万トンの握力を込めて回転を無理矢理に 止めて、たまらず円盤形態を解除したノーバを、まるでハンマー投げの ひも付き鉄球を振り回すように両腕ですそを掴んだままぶん回し、 さらにそのままパワーに任せて勢いよく地面に何度も頭を叩き付けた! もちろん、エースも受けてばかりではなく、さっきまでのお礼とばかりに 腕を胸の前でクロスさせ、左右に勢いよく開くと同時にカラータイマーから 虹色の光線を発射した! 『タイマーショット!』 かつて超獣スフィンクスを粉々に粉砕した必殺光線が炸裂し、ボガールは 吹き飛びこそしなかったものの、大爆発によろめいて、体の前半分を 黒焦げにしてひざをついた。 もはや、形勢は完全に逆転し、シルフィードから見守る面々の顔も 一様に明るく強くほころんでいる。 「やったやったやったぁー! 見たか悪党どもー! あっはっはっはっ!」 「キュルケ……テンション上がりすぎ……」 「隊長、勝てます、勝てますよこれは!」 「ああ、もう大丈夫だ。よぅし、そのまま逃がさぬように一気にたたみかけろ」 「な、なんだか展開についていけなくなってるんですけど……とりあえず がんばれー!」 「きゅーい!」 そうだ、ジャスティスと、完全回復したエースがタッグを組んだ以上、 ボガールとノーバといえどももはや敵ではない。 ジャスティスは連続して叩き付けた末にぼろきれのようになったノーバを ボガールに向かって投げつけると、エースのそばへとジャンプして 降り立ち、エースと目を合わせてうなずきあって、ボロボロになった 二匹へ向かって、同時にとどめの一撃の体勢に入った。 「ヌゥゥゥ……」 両腕を上げたジャスティスの眼前にエネルギーが集中し、エースは 体を大きく左にひねる。もうボガールとノーバには回避するだけの 余裕はない。 とどめだ! ノーバは鞭と鎌をだらりと垂れ下がらせ、ボガールに向かって寄りかかるように 倒れこんでいる。そこへ、二人はありったけの力を込めた一撃を放った! 『ビクトリューム光線!!』 『メタリウム光線!!』 金色の光と三原色の美しい輝きが重なり合い、光の奔流となって二匹の 怪獣へと突進し、一瞬のうちに光芒の中へと飲み込みさると、大爆発を 引き起こして消し去った! 「やった……勝ったぁ!」 黒煙が吹き上げて、火の粉が空中ですすに変わりながら消えていく中に、 二匹の姿はどこにもなく、見守っていた者たちの中から歓声があがった。 さらに、見るとノーバのガスにやられていた人々も、その効力が切れたらしく、 凶暴化していた人々は糸が切れたように倒れこんでいる。過去の例から見て、 おそらくは無事であるだろう。 エースとジャスティスは、少なくともこの場でのヤプールの計画は完全に 崩壊したことを確認すると、互いに目を合わせて、わずかにテレパシーで 語り合った。 (あなたは……?) (ジャスティス……) (あなたも、ウルトラマンなのか?) (そうだ、お前こそ何者だ? この星に逃げ込んだスコーピスの一体を倒したのもお前だな) (スコーピス、あの砂漠化を進めていた宇宙怪獣か。私の名はウルトラマンA…… 何者かと問われれば、話は長くなるが) (いいだろう、私もお前には聞きたいことがある) 両者はそれぞれ話したいことが山ほどあったが、このままウルトラマンの姿のままで ここに居続けると、それだけでエネルギーを消費してしまうので、同時に空を見上げて 飛び立った。 「ショワッ!」 「ショワッチ!」 二人のウルトラマンは、悲劇的な茶番劇の舞台となった戦場から、シルフィードの背に乗る、 たった五人の目撃者となった少女たちに見送られて、はるかな上空へと飛び去っていった。 そして数分後、エースとジャスティスの姿は、アルビオン上空高度一五〇〇キロの 衛星軌道上にあって、ハルケギニアを見下ろしていた。 (アルビオンが、あんなに小さい) ルイズが、高高度からパンケーキのように小さく見えるアルビオンを眺めてつぶやいた。 彼女にとって、宇宙からこの星を眺めるのは二度目になるが、やはり宇宙からの 眺めというものは、地球は青かったと言ったガガーリンのようにちっぽけな人間を 圧倒するものがある。 が、今はこの青い星の上に立つようにして眼前に浮いている赤い巨人と会話 するほうが重要である。 「ここでなら、気兼ねなく話せるだろう」 ジャスティスは、自分には地球型の惑星内での時間制限は特にないが、 エースはハルケギニアのような星で活動するときはエネルギーを大量に 消耗するであろうことを、今の戦いから見抜いて、その問題のなくなる場所まで 彼をいざなったのだ。 エースも、星の影響圏を突破して、変身の時間制限がなくなったことで、 話をするだけの時間が充分にとれたことを、自分の体の状態を確認してうなずき、 ジャスティスに向かって静かに答えた。 「ああ……ジャスティス……いや、先に助けてくれたことを感謝する」 エースは、ジャスティスに向かって一礼した。通じるかはわからないが、 ウルトラマンとしてより、北斗星司としての人格が彼にそうさせた。 ルイズと才人は、二人のウルトラマンの会話を、じっと息を呑んで見守る。 「礼を言う必要はない。私は、奴を追ってきただけだ」 「奴……ボガールのことか? なぜ、奴を追っているのだ」 「ボガール……それが、奴の名か? 奴は危険だ、放っておけば、奴は この惑星の生態系に甚大な被害を与えるばかりか、やがては全宇宙規模で 同じことを繰り返すだろう」 そのジャスティスの洞察は、ボガールの習性を完全に的中させていた。 ボガールはいわばイナゴの大発生にも似た生物災害で、しかも数段悪質で 規模が極めて大きい。 それは、かつてジャスティス自身が戦った異形生命体サンドロスとも つながる、己の繁栄だけを欲する、宇宙の調和を乱すものであったために 数ヶ月前から追っていることを、ジャスティスはエースに告げて、今度は エースにお前はどこから来て、この星で何者が暗躍しているのかを尋ねた。 「私は、この宇宙とは別の次元にある宇宙の、M78星雲の宇宙警備隊に 所属しているウルトラマンの一人だ」 エースは、難しいことだと思いながらも、ジャスティスに一つずつ事情を 説明し始めた。 自分は、この世界とは異なる宇宙から、ルイズの召喚魔法で呼ばれたこと、 ヤプールと名乗る異次元空間に潜む悪意の塊のような侵略者がいることと、 その配下の超獣や宇宙人たちなど、ジャスティスはそれらをじっと聞いていたが、 やがてなるほどというふうにうなずいた。 「そうか、この星で起きている異変は、ただの別惑星からの干渉にしては 妙だと思っていたが、別次元からの攻撃だったとはな」 「信用するのか?」 「異次元、平行宇宙からの侵略はありえないことではない」 軽く言ってのけたジャスティスの言うとおり、こちらの世界でもジャスティスが 関わったものではなくとも、異次元人が他の惑星の侵略を企てた例はある。 「それに、悪いがさっきの戦いは離れた場所から見させてもらっていた。 お前が本当にウルトラマンなのか、確かめたくてな」 「どういうことだ?」 「お前の世界には、ウルトラマンは大勢いるようだが、この世界には私を 含めてもウルトラマンは二人しかいない」 「二人!? 君以外にも、この世界にはウルトラマンがいるのか?」 エースや才人は、ウルトラマンが二人しかいないというジャスティスの言葉に、 やはりここは別の宇宙なのだということを実感したが、同時にこの世界にも ウルトラマンはいるのだと知って喜びを覚えた。けれど、ジャスティスは 宇宙のかなたを望んでつぶやいた。 「だが、今はどこの宇宙を飛んでいるのか、私にも見当はつかん」 そう言われて、エースと才人は落胆したが、ジャスティスがこの星に やってきたのも、スコーピスがたまたまこちらにやってきたのを追撃 してきたからであり、広い宇宙での偶然の確率を考えると、ジャスティス だけでもいてくれたことは非常な幸運だったのだ。 けれどそこで、経過を見守っていたルイズが、エースのテレパシーを 借りてジャスティスに話しかけた。 (だけど、ずっと見ていたのなら、なんでアルビオン軍が衝突しようと しているのを黙っていたのよ) 「この星の人間か……悪いが、そちらの世界ではともかく、我々ウルトラマンは 宇宙全体の調和と秩序を守ることを使命としている。異種生命体の侵略攻撃 ならばまだしも、同族同士のなわばり争いに干渉する責任はない」 (な、国と国の戦争を、動物の争いみたいに言わないでよ!) 「宇宙全体の視点から見れば、大差はない」 (……っ!) ジャスティスの切り捨てるような言い方に、ルイズは激発しかけたが、 そこは才人がおさえた。 (ハルケギニアの人間の責任で起きた戦争を、ウルトラマンに解決して もらおうなんて、虫が良すぎるんじゃないのか?) ウルトラマンは個人としての人間一人一人を愛し、種族としての人類を 守護しようとはするが、その活動単位である国には、なんらの干渉もしないのは、 光の国のウルトラマンたちも一貫している。それは、全宇宙の平和を守るという 大儀のもとに絶対中立を必要とするためで、あくまで一方的な侵略行為は 阻止するが、たとえばミステラー星とアテリア星や、ドロボン星の戦争などの 同格の星間戦争には一切の干渉をおこなっていない。 どうであれ、ハルケギニアの人間が起こした問題は、どれだけ痛みを ともなおうが、その人間たちで解決せねばならない。厳しいようだが、 それが責任というもので、責任を守れないような種族は宇宙のどこへ 行っても信用されないだろう。 もちろん、エースもそれは重々承知しており、怪獣、宇宙人の出現が なければ、仮にハルケギニア全土が戦火に包まれようとも変身を許すことはない。 「二人とも、過ぎた力を行使する者は、無力な者と同様に争いの火種となる ことを覚えておいてくれ。それでジャスティス、私はまだこの宇宙がどういう ところなのか、この星以外ではほとんど知らないのだ」 エースに問われて、ジャスティスはテレパシーでこの宇宙の概要をエースに 伝えた。それによると、この星……仮にハルケギニア星と呼ぶ星は、エースのいた 宇宙で地球のあった銀河系とほぼ同じ形をした渦状銀河の、地球のある オリオン腕と呼ばれる場所から銀河系中心部をはさんで反対側にあり、 ほかにもマゼラン星雲、アンドロメダ星雲などもほぼ同じものが存在し、 もちろんその中にある惑星や種族はほとんど別種の進化をたどった、聞いたことも ないものばかりだが、宇宙地図的にはそっくりであって、ここが並行宇宙で あることをあらためて納得した。 だが、その中でも驚いたのは、この宇宙にも地球と呼ばれる星があった ことであった。 「まさか……そこまで同じとは」 もちろん、似てはいるけど並行世界の別物であるからGUYSもないし、 日本はあるけど、様相はかなり異種であるらしいから、名前だけは同じの まったく違う星で、しかもハルケギニア星とは八万光年は離れているから 影響も皆無だが、才人はもしかしたらその地球にも同じ平賀才人という 人間がいて、別の人生を送っているかもしれないと、複雑な思いを抱いた。 「むぅ……ありがとう、だいたいはわかった。それでジャスティス、君は これからどうするのだ? 私は、彼らといっしょにヤプールの侵略を阻止に向かうが」 「私は、ボガールを追う。ヤプールとやらも、宇宙の調和を乱す存在である以上、 私の敵ではあるが、奴の貪欲さはそれにも増して危険だ」 (ちょ、ちょっと待て、ボガールはさっき倒したんじゃなかったのか!?) 才人が慌てて、さっきの戦いで爆炎の中にノーバとともに消えたボガールが 生きているのかと問いただすと、ジャスティスは不愉快そうに答えた。 「人間の視力では捉えられなかったのも無理はないが、奴は我々の攻撃が 命中する直前に離脱に成功している。見てみろ」 すると、エースとジャスティスの間の空間に、ホログラフで今の戦いの 再現映像が映し出され、スローで再生される中で、瀕死のボガールが メタリウム光線とビクトリューム光線の直撃寸前に、捕食器官でノーバを 飲み込んですぐに背中から皮を残して脱皮し、異次元に逃走する様子が 再現された。この間、わずか0.1秒以下。 (くそっ、なんてしぶとい奴なんだ!) 才人がじだんだを踏みそうな勢いで吐き捨てた。あのとき爆発したのは、 ボガールの残した抜け殻に過ぎなかったというわけだ。なんという逃げ足の速さ、 さらに脱皮したということは、ボガール自身もパワーアップしているに違いない。 ホログラフを消すと、ジャスティスはボガールがここ数ヶ月のあいだに、 アルビオンに現住するものから宇宙怪獣までもあちこちで捕食していた ことを告げると、最後に言った。 「ただし、脱皮したとはいっても奴がパワーアップした自分自身に慣れる までには時間があるだろうし、かっこうの餌場であるこの星を簡単に 離れるとも思えないが、奴は今でもヤプールの命令に服従してはいない 様子であったから、いずれこの星を離れて別の星を荒らしにまわるだろう。 そうなってしまえば、再び補足するのは困難だ」 ジャスティスは、ボガールが第二のサンドロスとなる可能性を考え、 まだ不完全なうちにこの星で殲滅しようと決意していた。 エースは、ジャスティスが行動を別にすると言ったことに、少々の残念を 覚えたが、ボガールも宇宙全体にとって脅威となる生命体であることには 変わりなく、ヤプールと戦っているうちにボガールに漁夫の利を占められる ことは避けたかったので、そのままうなずいた。 「わかった。ボガールは怪獣を食うたびにパワーを上げていく。注意してくれ」 「言われるまでもない。そういえば、アルビオンという国を旅しているうちに 聞いたことだが、レコン・キスタとやらは首都防衛のためと称して、大量の 空軍戦力を首都近辺に温存しているそうだ」 「空軍戦力? しかし、そんなものがあるならなぜ今の戦いに投入しなかったのだ?」 アルビオンを含めてハルケギニアの空軍戦力は幻獣を除けば、飛行する 帆船による空中艦隊で、それで頭を抑えられれば陸上兵力はひとたまりも ないはずであり、クロムウェルがヤプールの傀儡としても、その他の軍人が 納得するとは思えなかった。 「風石の採掘場が王党派陣営に抑えられ、長くは飛べないからと理由付け られてはいたが本当のところは知らん。だが、ヤプールが人間を利用する 作戦を好んでいる以上、何らかの関係はあると思うがな」 「なるほど、ありがとう」 あのヤプールが一度作戦を失敗させたからといって、おいそれとあきらめる とは思えない。だが、次になにかを起こすであろう場所が特定できるのなら、 対策も打ちやすい。 (これで、目的地は決まったな) (アルビオン首都、ロンディニウム……) そこでの計画さえつぶせば、さしものヤプールとて打つ手は残していないだろう。 まだ未知の怪獣、超獣、宇宙人が待ち構えているのに違いないが、アルビオンが 平和を取り戻せば、ヤプールの力の源であるマイナスエネルギーも減少する。 「では、私は行くぞ。ボガールに、これ以上時間を与えるわけにはいかん」 ジャスティスは振り返り、眼下に見下ろすアルビオンへと戻ろうとしたが、 その前にエースが引きとめた。 「ジャスティス……また共に、戦ってくれるか?」 「……我々は、ウルトラマンだからな」 そう言い残すと、ジャスティスはまだアルビオンのどこかで怪獣を狙っている であろうボガールを仕留めるために飛び立ち、エースもまた才人とルイズの 仲間たちの待つ元へと飛んでいった。 戦いが終わった後、赤い雨が上がって静けさを取り戻した草原は、戦いに 参加していたキュルケたち以外は貴族から平民まで総勢二十万人が洗脳が 解けた後遺症で、死屍累々と気絶した姿をさらす壮絶な風景となっていた。 そんな無残な光景を、キュルケたちはシルフィードを少し離れた場所に 着陸させて、濡れた服をはたきながら眺めていたが、やがてロングビルが 憮然としたようにつぶやいた。 「とてもほんの一時間前に、精悍な姿を見せていた軍隊とは思えませんわね」 眼鏡をくいと右手で持ち上げながら言う彼女の言葉の内には、何年か前まで 自分と自分の一族が誇りを持って仕えていた国家が、その当時想像もできなかった 惨めな姿を目の前にさらしていることへの、悲哀がにじみ出ていた。 つわものどもが夢の後、地球の古い歌人が残した一文だが、どんなに 権勢をふるって栄えようとも、後世の歴史から見れば一時の夢に過ぎない。 しかも、これはなにもアルビオンに限ったことではなく、条件が揃っていれば ヤプールがターゲットにしたのはトリステインやゲルマニアなど、アニエスや キュルケたちの故郷であったかもしれず、他人事とは思えないキュルケは、 目の前の人々をゲルマニアの人々に重ねてため息をついた。 「人間も国も、滅ぶときはあっという間なのね」 「いや、悪いがまだ滅びてもらっては困る」 アニエスが、キュルケの言葉をさえぎって発した言葉に、一同は注目した。 彼女によると、このままではヤプールに勝てるうんぬん以前にアルビオンが 無政府状態になるのは避けがたく、そうなればトリステインなどの他国が 調停に乗り出すことになるが、権益などをめぐって争いが起こることは 当たり前で、やっと各国につながり始めた対怪獣防衛網が瓦解してしまう ことになりかねず、レコン・キスタは論外であるから、ここはなんとしてでも 王党派にアルビオンを再掌握してもらわねばならないのだと。 が、そのことは皆にもわかったが、実際王党派はこのありさまで、 目を覚ましたとしても、中核となるウェールズが洗脳が解けたとはいっても 操られていたときのようなカリスマ性は望みえるまい。 「まるで、死人の目を覚まさせるような難題ですわね」 「だが、やってもらわねばハルケギニア中がこの騒動のとばっちりを 受けてしまうことになる。まったく、気が重いわ……」 大きく息を吐き出して、アニエスはアンリエッタ王女から受けた使命に よって、ウェールズを助けなければならないことに、どうしてこう頼みも しない面倒な仕事ばかりが舞い込んでくるのかと、憂鬱になりかけたが、 そこへシルフィードの上からミシェルが顔を出した。 「私がいますよ、隊長」 「ふっ、そうだったな。頼りにしているぞ」 笑顔のはげましに、笑顔で応えたアニエスは、ミシェルの気遣いに 感謝した。これからやるべきことは多く、今は無理でもミシェルや 銃士隊全員の助力を必要とするときはすぐに来るだろう。 だが、それらのことも、まだヤプールがレコン・キスタを掌握している以上、 近いうちにまた何かを仕掛けてくるはずで、それを撃破できなければ すべて絵に描いたもちに等しい。 アニエスはそこまで考えて、これからの行動の優先順位を決めようと したときに、やっと待っていた二人組の声が聞こえてきた。 「おーい、おーい」 「待ってーっ、まだ行かないでーっ」 「……遅いぞ! さっさと来い」 ぜいぜいと息を切らしながら才人とルイズがアニエスの怒鳴り声に 迎えられながら走ってくるのを見て、ミシェルが勝ち誇ったように、 「な、無事だったろ」と言ったのには、キュルケやロングビル、ついでに タバサも、「ああ、やっぱりね」と、そのしぶとさに正直な感服さえ覚えていた。 「今回は、ずいぶん遅かったな」 「すみません、無事だった人を見つけたので、少し話を聞いていたので」 才人は、ジャスティスから聞いた情報をうまく脚色して皆に説明した。 皆は、この決戦を利用した作戦が失敗した後でも、レコン・キスタに かなりの戦力が残されているのに不安な様子だったが、とりあえず それは首都防衛のための固定戦力であろうので、ここにすぐ攻め込んで くることはないだろうが、たかが帆走戦艦の十隻や二十隻、ヤプールが その気になれば風石などなくても動かすことは簡単だ。 アニエスは、それらの情報を総合して、今できる最善の方策を考えて披露した。 「とにかく、その残存した艦隊戦力が問題だな。それさえつぶしてしまえば、 後は首都に残った兵力がせいぜい一万、その程度の数なら今回と 同じ作戦は使えないだろう。残るは、有象無象の反乱貴族のみだ」 「ということは、首都に乗り込んで、アルビオン艦隊をつぶしてしまえば、 もうヤプールにレコン・キスタを操る価値はなくなるってわけか」 「もしくは、ヤプールの傀儡となったクロムウェルを倒せば、あとは 勝ち馬に乗ろうとして集まった雑魚ばかりだから、レコン・キスタは 自壊するだろう。だが問題は、どちらも厳重に警護されている上に、 トリステインからの増援を待つ時間はないから、我々だけで片を つけなければならんということだ」 艦隊か、クロムウェルか、どちらかを倒せばヤプールの影をこの大陸から 一掃できる。けれど、人数は少なく難易度は高い。 けれど、皆が迷う中でルイズの決断は早かった。 「クロムウェルを倒しましょう。あいつを倒すか、ヤプールの傀儡であったことを 暴露すれば、レコン・キスタそのものが消滅するわ」 「だが、艦隊を残しておけば、それをヤプールが別に利用しようと考える かもしれないぞ」 「その危険性があるのは、トリステインやガリアの艦隊も同じことでしょう。 それに、艦隊をつぶすなら焼き払うしかないけど、そうしたら多くの犠牲者が 出てしまうわ」 確かに、言われてみればそのとおりで、人的被害を見てみれば、 クロムウェル一人を倒せばすむのに対して、艦隊は乗組員を巻き込んでしまう。 ルイズの口から人命尊重の言葉が出たことは少々驚きだが、彼女もより 広い目で見渡す目が、少しずつ養われていると思うと才人は誇らしくもなった。 「ようし、じゃあこれからロンディニウムに乗り込んで、クロムウェルとかいう おっさんをぶっ飛ばすか」 これで今後の方針は決まった。 やることが決まれば、思考回路が明確にできている才人などは切り替えが 早かった。相手が人間ならともかく、超獣か宇宙人が化けているのだと したら容赦する必要はない。 けれど、意気の上がる彼らの意表をつくような言葉がアニエスから発せられた。 「残念だが、私はここに残る」 「え? なんで」 「もうじき、ここの人間たちが目を覚ましたらパニックが起こる。そうさせないためにも、 ウェールズにはさっさと目を覚ましてもらって、向こうで倒れているレコン・キスタの兵も まとめて全軍を撤退させなくてはならんからな」 「確かに、ですができるんですかそんなこと」 「張り倒してでも目を覚ましてやってもらうさ、それに私にはトリステイン特使 としての立場と、アンリエッタ王女直筆の書簡がある。ウェールズ皇太子と 姫様は昔から親友だったと聞くから、あとはまあなんとかやってみるさ」 まぁ、アニエスさんの強引さにかかったら、大抵のごり押しは通るだろうなと、 口に出しはしなかったが、才人はなんとかうまくいくのではないかと思った。 もっとも、鬼より怖いアニエスに、ウェールズが女性にトラウマを持たねば よいのであるが、とても軟弱なとりまきの貴族どもには止められはするまい。 ともあれ、時間がないのでアニエスは他にやるべきことを順次説明していった。 「ミス・ロングビルは、すまないがいったんトリステインに戻って、ここであった ことを王女殿下に報告してもらいたい」 「それは、別に構いませんが、ここから王城までは二日はかかりますわよ」 「それは大丈夫だ。今頃トリステイン軍は、ラ・ロシュール近辺に前線を 敷いているだろうから、姫様もそこにいるはずだ。それに、今はアルビオンが トリステインに再接近する時期、急げば一夜で着けるだろう」 「わかりました。その代わりといってはなんですが、わたくしの故郷が これ以上荒れないように、しっかり頼みますわね」 「心得た」 アニエスは強くうなずくと、手持ちの紙に即席で紹介状と、種種の 報告内容を書いてロングビルに手渡した。ロングビルとしては、本当は すぐにティファニアのところに戻って無事を確かめたかったのだが、 事態がアルビオンはおろかハルケギニア全体の命運にかかってくると なると有無を言ってはいられなかった。 そして、アニエスは最期に、才人、ルイズ、キュルケ、タバサ、ミシェルを 見渡して頭を下げた。 「すまん、お前たちには一番危険な仕事をしてもらわねばならん」 そう、残ったこの五人のみが、今ロンディニウムへ向かって、ヤプールの 陰謀を砕くことができる唯一の希望であった。だが、そのために、軍人 でもない少年少女たちを敵の本拠地に乗り込めと言うのは、死ねと 言っているにも等しいので、ほかに選択肢がないとはいえ、良心に 痛みを覚えずにはいられなかった。 けれど、彼らには迷いは最初からなかった。 「別に、最初からそのつもりでしたから問題ないですよ」 「そうよ、それに最初に喧嘩を売ってきたのは向こうなんだから、買って やらなきゃヴァリエールの名が廃るわ」 才人とルイズに続いて、今度はキュルケとタバサも。 「ま、ここで食い止めなきゃ、ゲルマニアのあたしの故郷も戦火に 巻き込まれちゃうし、第一、ヴァリエールに背を向けるなんて、ご先祖に 顔向けできないわ」 「付き合いだし」 二人とも、乗りかかった船から下りる気はないようであった。 最後に、ミシェルに目を向けたアニエスは静かに問いかけた。 「お前はどうする?」 「私は、サイトが行くのならどこへでも」 「本陣では、お前はすでに裏切り者として手配されているはずだ。 生きて帰れないかもしれんぞ」 「私がいなければ、レコン・キスタ内部のことはどうにもならないでしょう? それに、私はもう死にはしません」 「わかった。サイト、ミシェルを頼んだぞ」 「はい!」 強く返事をした才人に満足したアニエスは、ミシェルの同行を許可した。 本来なら、まだ立つことすらままならないミシェルが同行するのは危険 極まりないが、なんとなく才人たちならば立派に守り抜いてくれると 思えていた。 ちなみに、レコン・キスタ本陣でミシェルが裏切ると思っている者は この中にいない。それが、信頼というものであった。 そして、善は急げとばかりに、各々はすぐに行動に移すことになった。 「では、武運を祈る」 「無茶はしないでね、生徒の戦死報告なんてつまらない事務を、私の 仕事に入れないでほしいからね」 アニエスとロングビルを見送り、シルフィードは五人を乗せて、 アルビオンの首都ロンディニウムへ向けて飛び立った。 アルビオンから発した波紋は、たちまちのうちにハルケギニア全体を 飲み込み、加速度を増して歴史の津波の下に乗り遅れた者を 押し流そうとしている。平和か、大乱か、いずれになるにしても、 この数日中に決着がつくであろうことは間違いなかった。 だが、大半の兵力を失ったとはいえ、反乱軍という看板を背負う レコン・キスタの貴族たちには降伏という選択肢はありえず、 文字通り死に物狂いになって最後の抵抗を試みるであろうし、 そんな余裕をなくした彼らを、ヤプールは嬉々として捨て駒に使うだろう。 もちろん、兵力に劣るレコン・キスタがどうしたところで勝利者と なることはないであろうが、混乱と戦火の種を残すことはできる。 ジャスティスとある程度似た意味で、異次元人であるヤプールに とって人間の国家などというものはどうでもいいものだった。 その証拠に、ヤプールは今回、戦争を利用してハルケギニア壊滅を 画策したわけだが、これまでに、人間を操れば簡単であろうのに、戦争を 作り出そうとしたことは地球の頃から一度もない。それは、ヤプールを 含む大多数の宇宙人にとって、一つの星は一つの星人が所有しているのが 当たり前なのに、別の種族ならばともかく、同種族のあいだで星の中に 狭い枠組みを無数に作って争いをするなどとは、到底理解できない 狭隘な思考だからだ。 奴の目的は、今も昔も全ての人間を絶望に染めた上で滅ぼすこと、 アルビオンは、たまたまその目的のための道具として適当だったので 選ばれたにすぎない。 ヤプールは、どんな心の隙にも忍び込み、どんなものでも利用する。 それに対抗するには強い心を持つしかないが、これまでハルケギニアの 外からの攻撃にさらされたことの無い、この世界の人々にとって、 外惑星からの悪意に満ちた攻撃に対抗するには、あまりにも経験が不足していた。 しかし、心あるものがいる限り、運命はその方向をどうとでも変える。 アルビオンで才人たちと別れたロングビルは、スカボロー港まで王党派から 拝借した上等な馬をぶっとおしで走らせ、アニエスからもらった資金で竜を 借り切ってラ・ロシュールまで直行し、半日でトリステインに戻ることに成功した。 この時期、トリステイン軍はアニエスの言ったとおりに、トリステインに最接近する アルビオン大陸を眼前に見る、港町ラ・ロシュール近郊の、タルブ村郊外に再建なった その主力を結集させつつあった。 現在の総兵力は、一万五千と最盛期にはおよばないものの、港には空軍も艦隊の 出動準備を整えて、陣頭指揮をとるべくやってきたアンリエッタ王女の命令を待っている。 その本陣へ、夜明けとともにラ・ロシュールから魔法学院の教師で、銃士隊隊長 アニエスの使いと名乗る女性が駆け込んできたとき、アンリエッタはわずか三分で 身なりを整えて、仮司令部のテントにやってきた。 「ロングビルさん、でしたわね。オスマン学院長の秘書さんの」 「はい、学院では殿下にお目にかかっております。ご記憶いただけて光栄ですが、 ことは急を要しますので、ご無礼をお許しください」 ロングビルはアンリエッタに対して、礼節を正しく守って拝礼した。彼女にとって、 元々こういう作法は貴族であったころに教え込まれて慣れたものだったので、 その気品漂う姿はアンリエッタの心象をよくした。 だが、ロングビルの口から、昨日アルビオンで起こった決戦の始終が余す ことなく伝え聞かされると、白磁のような姫の肌から、さらに血の気が引いて 死滅した珊瑚のようになっていった。 「王党派が……壊滅……ウェールズさまも、意識不明」 よろめいて椅子に崩れ落ちたアンリエッタを責めるのは酷であろう。ワルドによる 暗殺の計画を阻止するためにアニエスを向かわせたとはいえ、これまで王党派が 有利とばかり聞かされていたのに、それが一夜にしてひっくり返されたのだから ショックを受けるなというほうが無理である。 それでも、アンリエッタはウェールズの命には別状がないことと、アニエスが 彼の元へ向かって王党派の瓦解を防いでくれているであろうことを聞かされると、 大きく深呼吸をして気を落ち着かせ、猛々しくも音楽性を感じさせる声で、 軍政の腹心であるマザリーニを呼びつけて、あいさつもそこそこに命令を下した。 「すぐに可能な限りの兵力をアルビオンに上げる準備をしなさい。出立は 六時間後、正午をもって艦隊を出港させます!」 続く 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5430.html
前ページ次ページゼロの赤ずきん 「実はね、バレッタちゃん……」 任務に関する、詳細をバレッタに説明しようと語りだしたところ、ルイズが遮った。 「あ、あのね、バレッタ。私たちは、アルビオンっていう国に行って、とある人から手紙をもらってくるの、 ね?これだけ分かれば十分よね?うん、明日の早朝行くことにしたから、今日はもう準備して寝なくちゃ!うん」 焦ったように、早口で言ったルイズ。その様子に僅かばかりか、怪訝な表情になったアンリエッタが、ルイズに言った。 「まあ、ルイズ・フランソワーズ。バレッタちゃんにも、ちゃんと話を聞く権利がありますのよ。 それに、この任務は重大な責任を負うと共に、あなた方の生命の危険まで付きまとうこととなるのです。 何も知らずに、とはいかないはずじゃないかしら。それに、こんな無理を頼むのはわたくしなのです。 ですから、せめてわたくしの口からバレッタちゃんに説明させて頂戴」 「し、承知しました、姫さま……」 アンリエッタの言っていることはもっともだ。もっともではあったが、 正直言ってルイズは口から魂が抜けだしそうな、絶望的にな気分になっていた。 何故か?それは、ルイズにとって、最善策への道筋を断ち切られたようなものであったからだ。 ルイズが構想していた最善策とは、この任務において、バレッタには最低限の情報しか渡さずに従事させることで、 行動の制限を図る、というものであった。 しかし、この目論見も所詮絵空事、もとから上手くいくとはルイズ自身も考えていなかった。 ルイズが、バレッタからの追及を逃れられなければ、 たとえアンリエッタが、バレッタに情報を渡さなくとも変わらない。 そして、当然として、バレッタからの追及に抗えるという甘い考えはルイズの中にはなかった。 なるべくしてなったというわけだ。 やはり今回の任務の間に、バレッタとの決着をどうにかしてつけなければならないと、ルイズは決心した。 自分がどうにかしなければならない、他の誰かがやってくれるのを期待するわけにはいかない。 ルイズ自身、どうして自分が今このような決心ができるのか、内心不思議に思った。 以前の自分ならば、どうだろうか? 「ルイズ?話を進めてもいいかしら?」 「そーよっ、バレッタも早く聞きたいんだから、ぼーっとしてちゃメッなんだからね?ルイズおねぇちゃん♪」 考えにふけっていたルイズは、二人の言葉ではっとした。 「……ええ、申し訳ありません姫さま、お話しを続けて下さい」 一度、息を吸って、気分を切り替えたアンリエッタは、語り始めた。 「バレッタちゃん、実はわたくし、ゲルマニアの皇帝に嫁ぐことになったのですが……」 「ゲルマニアに?まっさかー、まじでぇ?」 後半は呟くように、勿論アンリエッタに聞こえないように言った。 度々、町に出ては、世界情勢についても調べていたバレッタは、ゲルマニアのことも知っていた。 たしか、トリステインの東北に位置する大国。 金さえあれば、メイジでなくとも貴族になれるところ、とバレッタの記憶にはあった。 なるほど、これはちょうどいい、とバレッタは思った。 帝政ゲルマニア。バレッタが、今一番に興味を寄せる一つの国である。事が進めば転がり込んでくる利潤は大きい。 思わず、舌舐めずりをしたくなる心境であった。 だが、バレッタを除く二人の表情は暗い。 ルイズは唇を噛んで悔しそうに言った。 「あんな野蛮な成り上がりどもの国に、姫さまが……」 「仕方がないの。同盟を結ぶためなのですから」 アンリエッタは、ハルケギニアの政治情勢をバレッタに説明した。 トリステインの隣国である、アルビオンの貴族たちが反乱を起こし、現王室が今にも倒れそうなこと。 反乱軍が、勝利を収めるようなことがあれば、次にトリステインに侵攻してくるであろうこと。 そして、それに対抗すべく、トリステインはゲルマニアと同盟を結ぶことになったこと。 同盟のために、トリステインのアンリエッタ王女がゲルマニア皇室に嫁ぐこと……。 これらのことを、淡々とアンリエッタが語っている間、ルイズとアンリエッタの間には重苦しい空気が充満していた。 無理もなかった、国の存亡のためとはいえ、自身が望まぬ政略結婚をしなくてはならないのだから。気が沈んで当然である。 二人の間に、しばしの間沈黙が続いた。 しかし、一人だけ、その話を聞いて違う感想を持った者が居た。 もちろんバレッタであったが、可愛く、幼げで、無垢な少女を演じる彼女は、何も漏らさず、すべてを自分の心の中に収めた。 バレッタは素早く懐からハンカチを取り出し、涙を拭うような仕草をした。 「うう……グスン。ヒメサマかわいそうなのね、好きな人と結婚できないなんて……カワイソウだよっ、えーんっ!えーん」 自分の身の上話を聞いて、大声を上げて泣いてくれるバレッタに、思わずアンリエッタは目頭が熱くなる。 「わたくしのために泣いてくれるの?バレッタちゃん。ホントに心が純粋でキレイなのね。今の王宮内とは大違い。 でもいいのよ、好きな相手と結婚するなんて、物心ついたときから諦めてますわ」 「姫さま……」 「礼儀知らずなアルビオン貴族たちは、トリステインとゲルマニアの同盟を望んではいません。 二本の矢も、束ねずに一本ずつなら楽に折れますからね」 アンリエッタは呟いた。 「……したがって、わたくしの婚姻を妨げるための材料を、血眼になって探しています」 「もし、そんなのが見つかっちゃったらぁ……大変だよねっ」 「ええそうよ、バレッタ。本当なら、このことがあんたに知れる時点で……、ゴホン!ゴホン! と、ともかく、残念なことに、姫さまの婚姻を妨げる材料があるって話よ」 アンリエッタはルイズの言葉に、悲しそうに頷いた。 「おお、始祖ブリミルよ……、この不幸な姫をお救いください! ……すべては、すべてはわたくしが以前にしたためた一通の手紙が原因なのです」 「手紙、ねぇ」 「そうです。それが、アルビオンの貴族たちの手に渡ったら……彼らはすぐにゲルマニアの皇室にそれを届けるでしょう」 ふむふむ、といった感じでバレッタはアンリエッタの話を聞いている。 結婚を妨げるような要素。バレッタには、大方の予想がついていた。 「どんな内容の手紙か聞いて……んー、聞いちゃ不味いよねぇ、ヒメサマ?」 「……そうね、それは言えません。でも、それを読まれでもしたら、ゲルマニアの皇室はこのわたくしを赦しはしないでしょう。 ああ、婚姻は破綻し、トリステインとの同盟は反故。となると、トリステインは一国にて、 あの強力なアルビオンに立ち向かわねばならなくなるでしょう……」 アンリエッタは続けた。 「そして、その手紙は手元にはないのです。実はアルビオンにあるのです 敵の手中にあるわけではないのですが、手紙を持っているのは……」 そこでアンリエッタの言葉につまった。これから言う内容がアンリエッタにとって心苦しいものなのか、 胸の前で組まれた両手に力がこもっているのが、ルイズにも見て取れた。 そして、ルイズは助け船を出すように、アンリエッタの言葉の続きを言った。 「手紙を持っているのは、アルビオンの反乱勢じゃないの。反乱勢と骨肉の争いを繰り広げてる、 王家のウェールズ皇太子がお持ちなのよ」 「ああ!破滅です!ウェールズ皇太子は、遅かれ早かれ、反乱勢に囚われてしまうわ! そうしたら、あの手紙も、明るみに出てしまう!そうなったら終わりです! 同盟ならずして、トリステインはアルビオンに……!!」 「なーるほどねぇ、つまりヒメサマが頼みたいっていうのは……」 「本当ならばこんなこと頼めるはずがありません、貴族と、王党派が争いを繰り広げている、 アルビオンに赴くなんて危険なことを頼むなんて……」 「姫さま!先ほども申し上げましたが、私はこの身がたとえ朽ち果てようとも、何処なりと向かいますわ! 姫さまとトリステインの危機を、このラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズ、 見過ごす由はありません、何なりと申し付けてください。必ずや成し遂げて見せます」 ルイズは膝をついて恭しく頭を下げた。 それに、負けじとバレッタは、アンリエッタの腕を両手でしっかりと抱き、満面の笑みを浮かべ、そして上目遣いで言った。 「うんっ!バレッタもおんなじだよっ♪ヒメサマためなら火の中、水の中。どこへだっていくんだからっ!」 火の中、水の中?うそつくのも大概にしときなさいよ、バレッタ。 あんたが赴くところは、金の匂いがするところだけでしょうにっ! 心の中でしか、ツッコミをいれることができないこの状況にルイズは、半ばイライラしていた。 おもいっきりバレッタの本性を姫さまにぶちまけてやりたい、という衝動に駆られる。 しかし、二人の行動をそのまま受け取ったアンリエッタは感極まった様子で言った。 「ああ!なんて、頼もしいのかしら、これが誠の忠誠と友情です。わたくしはこのことを生涯忘れはしないでしょう。 そしてわたくしは、きっと、この困難な任務をやり遂げてくれると信じます」 「はい、一命に変えましても必ずや、アルビオンのウェールズ皇太子を探し出し、手紙を取り戻してみせましょう」 「……んーでさぁ、これって結構急ぎだよね?」 「そうよ、バレッタちゃん、アルビオンの貴族たちは、王党派を国の端っこまで追い詰めていると聞き及びます。 まことに残念ながら、敗北も、もはや時間の問題でしょう」 ルイズは真顔になると、アンリエッタに頷いた。 「では、先ほど申し上げた予定通り、明日早朝に、ここを出発いたします」 頷いたアンリエッタはそれから、バレッタの方を見つめた。バレッタは相変わらず作り物の笑みで顔面を固めている。 「かわいらしい、使い魔ちゃん」 アンリエッタは、バレッタの手を包むように両手で取ると、身を少しかがませてバレッタの顔の高さにあわせた。 「なーにぃ?ヒメサマっ」 「わたくしの大事なおともだちを、よろしくお願いしますね?」 そう言われたバレッタは、握られている手の中を見た。 先ほどまで、アンリエッタが身につけていた指輪を渡されたのだった。 「母君から頂いた『水のルビー』です。せめてものお守りと思って持っててね、 でもお金が心配なら、売り払って、旅の資金に当ててもいいし、仕送りしてもいいわよ」 ルイズは驚いたような声を上げた。 「姫さまっ!いいのですか?」 指輪を受け取ったバレッタはまるで、宝石商が品を見定めるような目つきで指輪を見た。 穴があくほど指輪を見たバレッタは、珍しく驚いたというような、呆然とした顔をしている。 その様子に、アンリエッタはニコリと笑顔で返答した。 バレッタは、深々とアンリエッタに頭を下げた。 「わかりました。必ずや、この任務果たしてみせますわ、アンリエッタ王女」 アンリエッタもルイズも目を丸くさせて驚いた。 急に大人びた声で、バレッタがそう言ったのだから驚くのも無理はない。 ルイズも、なにか異様なものを感じた。今までとは何かが違う、そう思えた。 もしかして、これは本心から言ってる?そんなまさか、ありえないわよ、ありえるはずがないのよ……。 しばし静寂が辺りを包む。 その静寂を破ったのは、ルイズでもアンリエッタでも、ましてやバレッタでもない、他の誰かであった。 部屋の入口の扉が僅かに開いていた。軋むような音を立て、扉は動いた。 ルイズが警戒態勢を取るが、何故かバレッタのほうは無関心であった。 「誰っ!姿を見せなさいよ!!」 ルイズが侵入者に対し、怒声を張り上げるが、何も返答はない。 代わりに何か得体のしれない、そして大きなものが扉の間から、冷たい石床を這ってうごめいているのが見て取れた。 そしてその物体は、ルイズ達が居る部屋に入ってきた。 よくよく目を凝らして見てみれば、それはまさしく人間だった。 「ギーシュ!?なんであんたがここに!?」 そこには、口に猿轡をされ、スマキ状態で横たわっているギーシュが居た。 そして、体をくねらせ、必死に這って動いてルイズ達に向かっていっていた。 アンリエッタは、まるでこの世のものではない物体を見るような眼をし、絶句している。 床に転がっている彼の名は、ギーシュ・ド・グラモン。かつて、バレッタと嫌々ながら決闘を行い、悲惨な結末を味わい、 果てには、持ち金すべてをバレッタにむしり取られた、ルイズと同じく、バレッタ被害者の会の一員であった。 「あーもうっ!生きのイイ芋虫ちゃんねぇっ、じっとしとけなかったの?」 ルイズが驚きの声を上げた。 「あんたがやったの!?」 「うん、まあ、そうよっ。部屋に来る大分前から気づいてはいたんだけど、さっき部屋を出た時に、チョチョイっとね。 でもね、この『知らない』男の人ね、ヒメサマを尾行してたんだからしかたがないよねっ? バレッタもね、ホントーは、こんなことしたくなかったのよぉ、……グスン。でもね、ヒメサマの為だものっ、 この手がどんなに汚れよーとも、ヒメサマを思う者ならばこそ、なんでもしなきゃってなっちゃうのは当然でしょ? ねぇーー?ルイズおねぇちゃんっ?」 こんな風に同意を求められれば、肯定しないわけにはいかない。ルイズは答えた。 「え!?え……ええ、そうね。……まあ、今回は尾行してたギーシュが悪いのかしら、……運とかね」 「でも、この男性はどなたですか?ルイズには面識があるようですが?」 「ええと、それは……」 ルイズは迷った。このまましらばっくれた方がいいのではないかという気もした。 必死に動き続けていたせいか、ギーシュの口にはめられていた猿轡がずれ、 ギーシュは、言葉を発することができるようになった。そしてギーシュは、開口一番にある言葉を叫んだ。 「ぼくも仲間に入れてくれ!!!一緒に連れて行ってくれ!!」 「……あぁーあ」 肩をすくめながら、呆れたような声でバレッタは言った。 ルイズは額を手で押さえている。 「聞いた?今の?確実にヒメサマの任務について聞いちゃったってことじゃなーい?いわなきゃいーのに。どうするっ?」 もっと遠くに縛って置いとけばよかったと、少し後悔しているバレッタであった。 アンリエッタの任務については、どうあっても、知られる者を増やしてはならない。 もし、ギーシュから何らかの形で情報が漏れるようなことがあれば、任務につくにあたってその危険性が跳ね上がるからだ。 そうなると、詳細を知ってしまったギーシュの扱いに非常に困る。 「なんで……もう。面倒は、バレッタだけで十分すぎるのに……」 気分を落ち着けるためにルイズは一度息を吸った。そしてギーシュに向って言った。 「ギーシュ。あなたの処遇だけど、良くて私たちの任務が終わるまで軟禁、悪くて縛り首、 てっとり早いのは、バレッタに処分を任せることだけど、どれがいい?せめて意見ぐらいは聞くわ」 「ちょ、待ってくれたまえ!!なんで一緒に連れて行っていくという選択肢がないんだね!? ルイズ!ちょっと君は、バレッタ君に毒されているんじゃないかい!?」 「……な!?何バカ言ってんのよ!?そそそそ、そんなのないわよ!!!断じてないんだからねっ!!」 「ルイズおねぇちゃん?」 ルイズは、バレッタの言葉で正気にもどった。 「え、ええ。……そうね。今はそれどころじゃないわね。でも、どうすればいいかしら?どうする?バレッタ?」 「えーぇ?そこで、わたしに聞くのぉー?ふーん。まっ、とりあえず七つほど考えたよっ。 まず一つ目はぁー、ちょっっと大き目のワルキューレを作り出させて、その中に押し込むでしょ?そしてぇ……」 淡々と、それでいてどこか楽しそうに処刑法を語るバレッタに、ギーシュの顔面は瞬く間に蒼白になった。 この二人に判断を委ねたらならば、自分の存在が抹消されかねないと感じたギーシュは、 アンリエッタに執り成してもらおうとした。 「姫殿下!その困難な任務、是非ともこのギーシュ・ド・グラモンに仰せつけますよう!」 アンリエッタが、きょとんとした顔でギーシュを見つめた。 「……グラモン?あのグラモン元帥の?」 「はい、息子でございます。姫殿下」 ギーシュはスマキになったまま、顔だけで起こし、きりりと真剣さを出した。 でもしまらない。縛られて床に転がっているギーシュの姿は海老フライにしか見えない。 「任務の一員に加えてくださるなら、これはもう、望外の幸せにございます」 熱っぽいギーシュの口調に、アンリエッタは微笑んだ。 「ありがとう。お父様も立派で勇敢な貴族ですが、 あなたもその血を受け継いでいるようね。ではお願いしますわ。ギーシュさん」 「じゃあ、縄を解いてあげないとねっ!モチロンわたしががやるよっ」 そう言ってバレッタは、ギーシュに駆け寄り、ルイズとアンリエッタに背を向ける形で座り込んだ。 ビクリと、ギーシュの体に緊張が走る。もはやギーシュにとってバレッタはトラウマの対象であった。 「あんたは邪魔、ついてくんな。マジでブッ殺すわよ。今すぐ撤回しろ」 座り込んだバレッタは、縄を解くふりをしながら、ギーシュにしか聞こえないように耳元で囁いた。 「『ぼく、やっぱり足手まといになるんで行きましぇーん』って言うんだよ、今すぐ。そうしたら、殺るのだけは勘弁してあげる」 ギーシュはゴクリと、息のみこんだ。 今の状態は、蛇に睨まれた蛙のようなものであった。返答を誤れば、丸のみされる。 だが、何もしないわけではなかった。ギーシュは自分の心を奮い立たせ、喉から絞り出すように言った。 「ぼ、ぼぼくは、一度君に完膚無きまでに叩きのめされ、金で命乞いまでした……」 「あぁん?そんなこと聞いちゃいねぇのよ?さっさとやめるって言えばいいっつってんだろ。無駄話すんなっ」 バレッタの警告に、あえて無視してギーシュは続けた。 「ぼくはっ!……ぼくは……君が怖い」 「……」 「今になっても、あの時ことを思い出すと震えが止まらなくなって眠れない夜もある」 バレッタは何故かギーシュの言葉を黙って待っていた。 「正直に言えば、君とは関わりたくないというのが本心だ。だけど、どうなる!?これからのぼくはどうなる!? ……ぼくは君が考えている以上に、あの時多くのものを失った。 だけど、失ってわかることがあるのを知った」 「……で?」 「失う前の自分に足りていなかったものも知った。失ったものの大切さも知った。 そして、それがどうすれば手に入るのかを考え……その時君のことが頭に浮かんだ 惨めな醜態をさらした僕が前に進むには、もう一度君と相対さなければ……いや、乗り越えなければならないんだ。 逃げたくないんだ、貴族として、メイジとして、そして何より一人の男として。 そのために、お願いだ。一緒に連れて行ってくれたまえ、頼む、必ず役に立ってみせる」 「テメーなんか弾避けにもならねーよ」 バレッタは、決意を露わにしたギーシュに対し、バッサリと切り捨てるように、残酷な、そして辛辣な言葉で迎え撃った。 だが、ギーシュの目はしっかりと、狂気の源泉であるバレッタを見つめていた。 そして、はっきりと、強い言葉でバレッタに言い放った。 「そうだ、ボクは弾避けなんかにはならない。だからこそ君について行く」 縄を解く演技をしていたバレッタの手の動きがピタリと止まる。 首がぐるりと動き、目を見開いてギーシュを見据えた。 またこの眼だ、とバレッタは思った。あのフーケ襲撃の夜に見た、あの眼と同じ。 目的を見据え、腹をくくった人間ほど始末に負えないものはない。 何かが切れる音が、部屋の中で響いた。 それは、ギーシュを縛っていた縄がバレッタのナイフによって切られる音だった。 ギーシュは、おもむろに立ち上がると、バレッタと向かい合った。 「邪魔になったら殺す」 「ありがとう、そうならぬように善処するよバレッタ君」 バレッタは、くるりと、片足でターンをすると笑顔でルイズに言った。 「じゃあ、ギーシュおにぃちゃんも一緒っていうことでいいよねっ?ルイズおねぇちゃん?」 「え!?え、ええ……姫さまが決めたことだもの、私は反論なんかないわよ。私はね……」 ルイズは驚かずにはいられなかった。 なぜならば、ギーシュを連れていくのを一番嫌がるのはバレッタであるはずだったからだ。 だが、その疑念は打ち切った。自分のすべきことは何も変わらない。 真剣な声でルイズは言った。 「では、姫さま。明日の朝、アルビオンに向かって出発するとします」 「ウェールズ皇太子は、アルビオンのニューカッスルに付近に陣を構えていると聞き及びます」 「了解しました。以前、姉たちとアルビオンを旅したことがございますゆえ、地理には明るいかと存じます」 「旅は危険に満ちています、アルビオンの貴族たちはあなたがたの目的を知ったら、 ありとあらゆる手を妨害しようとするでしょう」 「まっ、そしたらこっちも、ありとあらゆる手を使えばいーんじゃないっ?ギーシュおにぃちゃんに自爆してもらうとか」 ぼそりとアンリエッタに聞こえないように、バレッタが呟いた。ルイズはしみじみとした調子で言う。 「あんたのお得意よね。悪役っぷりなら文句なしだし」 アンリエッタは、机に座ると、羽ペンと羊皮紙を使って、さらさらと手紙をしたためた。 そして、自分が書いた手紙をまじまじと見つめていたが、そのうちに悲しげに首を振った。 アンリエッタは自分の中で何か思うことがあったのか。 決心したように頷き、末尾に一行つけくわえた。それからちいさな声で呟く。 「始祖ブリミルよ……この自分勝手な姫をお許しください。でも、国を憂いても、わたくしはやはり、 この一文を書かざるをえないのです……。自分の気持ちに嘘はつくことはできないのです……」 密書だというのに、まるで恋文でもしたためたようなアンリエッタの表情であった。 ルイズには何も言うことができなかった。ルイズにもわかってしまったからだ。 その手紙を送る相手がアンリエッタにとってどんな人物か。 アンリエッタは書いた手紙を巻いた。杖を振る。するとどこから現れたものか、巻いた手紙に封蝋がなされ、 花押がおされた。その手紙をルイズに渡す。 「ウェールズ皇太子にお会いしたら、この手紙を渡して下さい。すぐに件の手紙を返してくれるでしょう」 ルイズは深々と頭を下げた。 「この任務にはトリステインの未来がかかっています。無事に任務を完遂できるよう祈ります」 両手にVサインをつくり、ニコニコ顔でバレッタは言った。 「まっかせといてー!ヒメサマっ!!ラブリンハンターバレッタちゃんに任せておけば間違いなしよっ!!」 アンリエッタは満足げな表情をしているが、 ルイズとギーシュの乾いた笑い声を上げている。 この任務、どう控え目に考えたとしても何事もないはずがないのは、二人ともわかりきっていることだった。 前ページ次ページゼロの赤ずきん